布留川 創 院長(イデア矯正歯科)のインタビュー

イデア矯正歯科 布留川 創 院長

イデア矯正歯科 布留川 創 院長 HAJIME FURUKAWA

東京医科歯科大学歯学部卒業後、同大学顎顔面矯正学講座に入局。矯正専門歯科医院での臨床経験を積みながらも私立歯科大学での研究指導も経験。年毎に矯正用CADCAM活用の学会発表を継続し、2008年に『イデア矯正歯科』を開業。地域に根ざし、誰もが安心して受けられる矯正治療の知識と場所と技術を提供していく。

ようこそイデア矯正歯科へ 子どもからおとなまで、矯正治療が専門です

「矯正治療」はどんな治療かご存知でしょうか? 凸凹を治す治療だと、皆さんはおそらく思われているでしょう。もちろん治療目標の一つに含まれているものですが、それは最終目的ではありません。
歯科医師免許を取得するまでには矯正治療の勉強も必須なのですが、試験に受かるまでに得られる知識は本当にごくごく一部分でしかなく、実は歯医者さんの方でも理解が不足しているものなのです。
未だに「矯正治療はただ歯を無理やり並べるだけで、美容目的、きちんと咬めるものではない」と誤解されている方もあるようです。
本来治療を受けて得られる恩恵があるのに、マイナスの情報で治療を受けられなくなってしまうことは、不適切な治療を受けてしまうことと同じように残念なことです。いずれも患者側にも医療側にも適切な情報が不足していることが原因です。
2018年には小児の「口腔機能低下症」の指導が保険診療でも加算となりました。咀嚼指導の重要性を広く認知させるべきと言う社会的な働きなのです。

永久歯に生え変わったら、凸凹になってきたんです

歯並びの凸凹は「顔が小さいから」「歯が大きいから」と言われますが、お顔が本当に小さい患者さんは稀です。お口は全身の成長過程でしっかりとした咀嚼運動によって側方に拡大成長するものです。しかし、近代では食事も軟食化、親も子も多忙で食事時間も短縮化、アレルギー等により呼吸障害があってお口が閉じにくい、口呼吸が習慣性となっている患者さんが多くいらっしゃいます。
口呼吸が常になってしまうと、歯列が狭くなり、永久歯が並びきらずに凸凹になってしまいます。そのような場合、本来の咀嚼運動を行えるよう環境を整えるだけでもかなり歯列の側方拡大は取り戻せるので、昔は多少の凸凹でも「自然に治るから様子を見ましょう」と言われていました。しかし、最近ではそう思ったように状況が改善することは社会情勢的に期待が出来なくなっています。ですので、矯正歯科では咀嚼運動と類似したトレーニングを指導したり、矯正装置を併用して成長発育を回復するようなお手伝いをしています。

歯並びは凸凹だけではなく、顎の位置の前後左右のずれ・噛み合わせも問題です

しっかりとした咀嚼が得られれば、乳歯から永久歯へ生え変わりが進む間に歯列の健全な発育が得られますが、そのためにはきちんとお口が閉じられることが必要です。このとき、前歯部分が著しく出っ歯になっているとお口が閉じにくくなってしまいます。逆に前歯が反対咬合になっていると咀嚼が困難になり、舌癖等から下顎の過成長も誘導され、著しい下顎前突となります。このケースでは、歯の移動だけでは改善が困難となり、外科的矯正治療も必要となってしまいます。また、顎の左右のズレは軽度であれば個性の範囲ですが、片咀嚼につながると、成長後にはお顔の左右差が問題となる可能性も有ります。
ですので、幼少期に「矯正治療が必要かどうか」というのは単に凸凹の問題だけではありません。また、多少の問題であればその後の成長変化で解消されるのですが、口呼吸等の習癖がどの程度までであれば問題が大きいのか、小さいのかということは一概に言えず、実際の治療経験をもとに判断、説明が必要です。

子どもの治療と大人の治療:根本療法と対処療法

「子どもの治療」は、上記のような背景で、簡単な装置で本来の成長発育を回復してしっかりとした噛み合わせを獲得し、将来起こり得る問題を軽減することに本分があり、その過程において凸凹の軽減も行っていく「根本療法」となります。とはいえ、時間との戦いでもあり、限界はあるものです。
これに対し、大人の患者さんの場合は成長変化がありませんので歯列を広げることが困難な場合も多く、永久歯を間引きし、その場所を閉じながら凸凹を解消する便宜的な治療方針を選ばなければならないこともあります。抜歯、非抜歯に関わらず固定式装置を用いて行う矯正治療は対処療法の一環と言えるでしょう。
近年では成人でも顎骨に切れ目を入れ、骨ごと歯列を拡大する治療を行うことで、本来「子どもの治療」でなければ得られない「根本療法」的な治療成果を得ることもあります。
あるいは下顎が著しく大きくなってしまった場合等は、顎骨の中で前歯を動かしても反対咬合が解消できなくなりますが、そのような場合に「顎矯正手術」を併用して土台ごと位置を変化させる治療も多く行われています(一部治療機関では保険診療の対象となります)。
他にも、顎関節症の患者さんは歯並びに大きく問題があると症状の改善が困難です。そのような時は保険診療の範囲のスプリント治療ではなく、顎位置を変化させてから 噛み合わせを安定させるような丁寧な矯正治療の対処が望まれます。

これから受診される患者さんへ

医療の目的とは、患者さんの健康にありますが、その意味合いは時代に応じて変化してきました。
 私の親族も実は歯科医でした。祖父母の時代の歯科医療は虫歯でダメになった歯を抜くこと、入れ歯を作ることが多く、手遅れの状態を何とか回復する治療でした。父母の時代は虫歯を削って丁寧につめることや、神経まで進んだ虫歯の痛みを取る治療などが主でしたが、やはり対処療法です。現在、虫歯にならないように予防することが一般に認知され、また健康に期待する水準もあがり、矯正治療への期待も高まっている時代でしょう。

健康はその時点だけのものではなく、終末までを考えるものです。人は成長発育という坂を上り、成熟した後に加齢、老化と階段を下ります。矯正治療で成長発育を見ることは同じく高齢者の機能低下が進むさまを逆回しにしているのと同じで、小児に対する咀嚼指導は高齢者の嚥下指導に繋がっています。人は必ず死ぬものであり、終末医療のその先は短いものです。ですから、その重要性を認知していただき、成長発育の大切さを皆に知っていただけるように、当院は地域医療を担い、啓蒙活動を行うものです。

健全な口腔内の状況を作るには、矯正医だけではなく、一般歯科の先生方の力が不可欠です。開院から10年が経ち、幸いにも多くの先生と知り合うことができ、目的に向かって一緒に力を合わせられるようになりました。医療の形に正解はありません。医療の水準は刻々と変わっていくものであり、各々の立場で、そのときに可能な最高の治療を提供していけたらと考えています。
クリニック名にある「イデア」とは、ギリシャ語で「理念」のこと。矯正治療は患者さんの将来を見据えてのものでなければなりません。それを考慮したとき、私のあとに続く人が現れてくれるよう、あえて自身の名をつけず、「イデア」という言葉を冠しました。矯正治療の理念を具現化し、患者さんがいつまでも安心して通い続けられるクリニックにしていきたいと思っていますし、ここでの治療が、皆様を笑顔にする種の1つになってくれればと願っています。


※上記記事は2018年9月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

イデア矯正歯科 布留川 創 院長

イデア矯正歯科布留川 創 院長 HAJIME FURUKAWA

イデア矯正歯科 布留川 創 院長 HAJIME FURUKAWA

  • 出身地: 東京都
  • 趣味・特技: 考えること、細かい作業、競技スキー
  • 好きな作家: 海堂尊、ヨシタケシンスケ
  • 好きな映画: 『スター・ウォーズ』『ザ・スティング』(1973年・米)
  • 座右の銘: 「鶏口牛後」「李下不正冠」漢文の授業で教わりました。
  • 好きな音楽: 小、中、高と様々なジャンルの音楽を聴いてきたので、今はオールジャンルですかね。最近は患者さんの興味や流行を教えてもらって、拝聴するようにしています。
  • 好きな観光地: 「北海道のスキー場の雪はやっぱりいいですね」

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