苗加 勝則 院長(あぐり動物病院)のインタビュー

あぐり動物病院 苗加 勝則 院長

あぐり動物病院 苗加 勝則 院長 KATSUNORI NOUKA

大学を卒業後、製薬会社で人の薬の研究開発の仕事に携わる。獣医師の仕事に興味を持ち、大学に復学して小動物臨床を学び、神戸市の動物病院で獣医師としての研鑽を積む。2004年、あぐり動物病院を開院(JR線武蔵小杉駅北口より徒歩5分)。 

研究職から獣医師を志す

私はもともと基礎医学に興味があり、その中でも生物学系の研究職につきたいと考えていました。卒業後は久光製薬やファルアシア株式会社(現・ファイザー製薬)で研究開発の仕事に携わりました。友人からペットの治療で困ったという話や、治療に困っているペットの話を聞き、何か手助けができないかという思いから、獣医師になることを決意。大学で再度、小動物臨床について学び直しました。大学卒業後に一度、製薬会社で社会経験を積めたことは診療で役に立っていると思います。私が卒業した頃の獣医学科では動物病院へ就職する人はまれで男子中心の学科でしたが、再び入った頃はペットブームの頃です。女子学生が過半数を超え、時代の変化を感じました。大学で学んだ後は神戸市の動物病院で勤務医として研鑽を積み、2004年、あぐり動物病院を開院しました(JR線武蔵小杉駅北口より徒歩5分)。

犬、猫、小動物達のかかりつけ医として診療をおこなう

当院は武蔵小杉駅から南武線沿いに徒歩5分の場所にあります。近年周辺は再開発が進み、人口も増え、さまざまな世代の方がお住まいの地域です。サラリーマン時代からなじみだった場所でもあり開院の場所に決めました。医院名の「あぐり」とは農業や農学を意味するアグリカルチャー(agriculture)が語源です。開院当初は近隣に少なかった動物病院も、現在ではフェレットなど専門種を扱う病院も増えています。川崎市内には動物の高度医療センターも完成し、医療体制はかなり充実しています。
当院の診療動物は犬、猫とウサギなどの小動物です。日頃の健康診断や予防接種のほか、皮膚科、歯科診療、避妊・去勢手術まで幅広く対応しています。院内にはレントゲンや血液検査設備、診療設備、入院設備といった必要な設備は備えていますが、大きな手術や専門性の高い治療などは、高度医療センター等と連携して治療を進めていきます。ペットのかかりつけ医として患者さんと一緒に治療について考えていきたい…というのが当院の目指している動物病院の姿です。

「凛告を取る」ことを大切にする

当院が診察の際に最も大切にしていることは「凛告を取る」と言うことです。「凛告を取る」とは獣医師が飼い主さんにさまざまな角度から質問し、病状を把握しようとすること。言葉がしゃべれない動物達は自分の体のどこの具合が悪いのかを表現することができません。ですから、普段から身近でお世話をしている飼い主さんからお話を聞くことがとても重要になってくるのです。もちろん、その場で触診や聴診などもおこないますが、どんな症状が現れているか、いつから続いているか…という普段の様子をお聞きするほうが病気の情報量が多く、正確な診断を下す重要な指針になるのです。診察の際には、症状のほか、様子の違いに気付かれたきっかけと時刻、ここ数日の様子や普段の様子、そしてこれまで病気になったことや、もしおわかりになるならその動物の親兄弟の病歴などもお伺いできるとより正確な診断に繋がりますので、ペットの普段の様子をよく見ておいていただきたいと思います。
また、慢性的な病気の場合には検査数値のささいな上下に一喜一憂しないことが大切です。以前当院にみえた飼い主さんで、血液検査の数値をとても気にされる方がいらっしゃいました。血液検査も重要な指針になりますが、頻繁に検査をしてもあまり意味はありません。それよりも大切なことは、目の前のペットの様子をしっかりとみてあげることです。慢性的な病気で受診される場合には、急に食欲が落ちた…ぐったりしている…など最近の様子の変化も合わせてお教えください。

飼い主さんと一緒にベストな治療方法を考える

当院はペットの治療について、飼い主さんと一緒に何がベストかを考え、納得してもらい治療をしていくことをポリシーとしています。
現在の動物医療は高度化が進み、精密検査機器を使って人間同様の手術や治療をおこなうことが可能になっています。しかし、高度な医療や医療処置を受けさせることが必ずしも動物のためになるかと言えば、そうとは言えない場合もあるんです。
以前当院にみえた患者さんで、血尿がでるというワンちゃんがいました。調べてみたら膀胱がんの疑いがあります。急いで大学病院をご紹介し、結果は手術をしなければ余命3ヶ月との診断。長生きするためには膀胱を摘出しなければなりません。しかし、手術をしてしまうと、翌日からはおむつの生活です。確実に生活の質(QOL)が下がってしまいます。また、おむつをしたところが化膿してしまうと大変なことになります。16歳という高齢だった事もあり、飼い主さんは迷っていました。
話し合った結果、このまま内科的療法でいくのも一つの方法ですよねと、ひとまず内科的治療を進めてその子の様子をみることにしました。その後、半年が経ってもその子は元気な様子。時々血尿はでますが、毎日散歩をしてご飯を食べて元気に過ごし、結果的に1年間元気に生きることができました。
これはたまたま手術をしない方が良かった例…と言えなくもないでしょう。しかし、入院した犬や猫達の元気がなくなってしまうことは非常によくあることです。入院も大切ですが、ペット達は飼い主さんと一緒にいることで一番元気がでます。最もよい治療は、時として飼い主さんといる環境なのかもしれません。
また、糖尿病を患っているワンちゃんが受診にみえたこともあります。犬の糖尿病の場合、インシュリン注射が治療の第一選択です。でも嫌がる子に飼い主さんが1日に2回の注射を打たなくてはなりません。苦しい治療をするのは飼い主さんにもペットにも非常にストレスになります。飼い主さんもがんばって治療をされましたが、話し合った末、緩やかな治療に変更することにしました。嫌がる治療を受けさせるより、生活の質を重視し、経過観察をおこないながら一緒に穏やかに過ごすという、選択肢もあると思います。
当院ではペットと患者さんができるだけ最後まで一緒にいられることを治療方針にしています。入院設備もあり、ペットの容体が悪い時にはお預かりすることもありますが、基本的に飼い主さんと過ごすことをおすすめしています。動物医療は人の様な健康保険がないため、費用も高額になることが多く、患者さんの中には治療をあきらめてしまう方や、中にはペットに必要な治療をさせてあげられない…と罪悪感を感じる方さえいらっしゃいます。しかし、どの治療方法がベストかは飼い主さんやペットの状況により違ってきます。当院ではさまざまな方法を提示して、患者さんと一緒に最良の治療法を考えていきます。どうか、治療をあきらめる前にご相談いただければと思います。

これから受診される飼い主さんへ

ペットを病院へ連れてくるタイミングは病気や症状により異なります。年齢や種類によっても違ってきます。受診を判断する目安があるとすれば、ペットの様子をよくみるということが一番大切なことといえるでしょう。
例えば、ぐったりしているなど、明らかに様子がおかしい場合はもちろんですが、下痢が続いて元気がない、食事はおろか水分も取れない…などの場合は点滴が必要かもしれません。必要に応じて下痢止めなど、お薬などもお出しします。また、子犬や子猫の場合は大人のペットに比べて体力がありませんので、早めに受診されることをおすすめします。当院は土日も診療、お電話での予約も可能です。普段と様子が違うと感じた場合には、まずご相談していただければと思います。

※上記記事は2018年4月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

あぐり動物病院 苗加 勝則 院長

あぐり動物病院苗加 勝則 院長 KATSUNORI NOUKA

あぐり動物病院 苗加 勝則 院長 KATSUNORI NOUKA

  • 出身地: 富山県
  • 趣味: テニス、スキー、釣り
  • 好きな本・作家: 『海と毒薬』(遠藤 周作)
  • 好きな映画: スターウォーズ
  • 座右の銘・好きな言葉: 一期一会
  • 好きな音楽・好きなアーティスト: フォーク、吉田拓郎
  • 好きな場所: 家族で外食

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